¡Hola!

バジャドリードの市のベレン

いよいよクリスマスウィークですね。
昔から戦いのさなかでもひとときの休戦をもたらしてきたこの時を、たとえクリスチャンでなくても、平和のシンボルとして祝ってもいいのではないか、と思います。
さまざまな問題を抱え、行く先を見失いがちな今だからこそ、一日一日を大切に過ごしたい。家族や友人や大事な人たちが共にいることを感謝したい。その幸せを奪われてしまった方たちに、わずかでもお手伝いをしたい・・・。
なんといっても、クリスマスの主役であるイエスさまは、「他人のために苦しむ」ということを身をもって教えてくれた先駆者だったのですから。
寒風の吹くマドリードですが、家族と祝うクリスマスイブが待っている自分の幸運をかみしめ、何か少しでも自分にできることを探したいと思っています。

2011.12.18

¡Hola!

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12月の、風の冷たいマドリードに着きました。気温の寒さだけでなはなく、経済の冷え込みもひしひしと感じられます。
バブル崩壊後の日本を思い出させるような、スペインにしては暗い年の暮れ。去年以上の景気の悪さは、クリスマスという1年で一番盛り上がるはずの季節を、少し陰らせています。
それに輪をかけてさびしく感じられるのが、以前なら町の通りを歩くとあらゆるウィンドウに飾られていたベレンが、ほとんど見られないことと、イルミネーションが少なくて点灯時間も短いこと。
イルミネーションのほうは節電、節約という意味で仕方がないとしても、ベレンがないのは、ちょっと考えさせられてしまいます。
社会党政権はいくつも良い遺産を残したと思いますが、宗教へのけん制とベレンの排除は、関係ないのではないでしょうか。多くのスペイン人にとって、ベレンは日本の鏡餅くらい日常的な伝統で、ことさらに「信仰』を振りかざす行為とは思えないのですが・・・。
イエス様を待ち、3人の王様が贈り物を持ってきてくれるのを指折り数えて待つこと。そこに、宗教が強い権力を持ってきたこの国の歴史の暗黒の面を連想しないのは、私がこの国に育っていないからでしょうか。
今もベレンを飾っている友人の家でほっとしながら、明日から通りを散策してベレン探しをしてみようかと思っています。

2011.12.12

¡Hola!

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「ロスコン・デ・レイジェス(王様の日のリング菓子)」。聞いたことありますか? スペインのクリスマス菓子のひとつで、特に1月6日の公現節、スペインでは「ディア・デ・ロス・レジェス・マゴス(3人の賢人王の日)」と呼ばれる日に食べるパン菓子です。

ロスコンのルーツは古代ローマに遡るとも言われ、ブリオッシュに似たオレンジの香りの甘いパン生地を土台として、王冠をかたどったともいわれるリング型に焼くところからロスコン(大きなリング)と呼ばれます。中には小さな瀬戸物のフィギュアがひとつ入っていて、これが当たった人に幸運を招くといわれています。

1月5日から6日にかけて、スペイン中のお菓子屋さん、パン屋さんには、ロスコンを買う人たちで長い行列ができます。そして家でコーヒータイム。フィギュアが当たった人も当たらない人も、楽しいひと時を過ごします。

3人の王様がキリストに贈り物を持ってきた日。その日を祝うお菓子が、私たちにも幸運ももたらしてくれるといいですね。

2011.11.19

¡Hola!

Ensaladilla rusa(ロシア風サラダ)。スペインでは、ポテトサラダのことをこう呼びます。ずっと前から、「ポテトサラダがどうしてロシア風なのか?」と不思議に思っていましたが、スペインでは誰に聞いても「さあねえ。ロシアから来たんじゃないの?」という程度で、答えはなし。

ところが今回、料理クラスで教えるのをきっかけにもう一度調べてみたら、かなり信憑性のある説が見つかりました。19世紀のロシアはモスクアのオリヴェルというシェフが作ったのが始まりだ、というのです。だから別名「エンサラダ・デ・オリヴェル」とも呼ばれるのだそうです。

でも可笑しいのは、そのあとです。こういうポテトサラダのことをロシアでは「アメリカ風サラダ」と呼んでいる、というのです。

そういえば、私が子供のころ「スパニッシュ・オムレツ」というのは、トマトやグリーンピースなど色とりどりの野菜がはいったオムレツのことでした。最初にジャガイモだけの真ん丸なオムレツを食べたときは、これが本物だったのかとびっくりしたものです。

ensaladilla rusaアメリカ人がスペイン風だと思っているオムレツ。スペイン人がロシア風だと信じてきたサラダ。日本人がバレンシア風だと思っているパエーリャ。どれも、本国の人が見たら「え、どこが?」と驚くことになるのかもしれません。それもまた、楽しいですね。
ちなみに、アカデミーで教えているのはきちんとスペイン風の(笑)ロシア風サラダ、です。

2011.11.15

スペイン料理ひとりごと・その5
Entre cazuelas y morteros
ああ、ハモン、ハモン

1 de noviembre.2011

料理エッセイ
 アカデミー賞受賞で有名になった男優ハビエル・バルデムの出ている映画「ハモン、ハモン」の話ではありません。ハモンのことを書こうと思ったら、語呂がいいのでなんとなく繰り返してしまっただけです。
 ハモン。生ハム。山岳地帯で作るハム。これほどスペインの食生活に密着した存在はありません。絶えず目にするし、食べてもいる。値段もピンからキリまであって、高いのは本マグロのトロを買うような思い切りが必要な値段だし、比較的安いものは、バルでの手っ取り早いおつまみからボカディージョ(サンドイッチ)にはさまって駅で売られているお弁当まで、あらゆるシーンに登場します。
 かつて一世を風靡した闘牛士、エル・コルドベスの伝記小説のなかに、
 「成功をおさめた彼にとって、ベッドの傍らにおかれた1本のハモンは、もう飢えることはないと感じるための最高の保障だった」という1節がありました。
 目が覚める。ハモンが丸ごと目に入る。それが何よりの安らぎを与えてくれる・・・。とことん貧しく飢えた時代を通りぬけ、自分の腕1本と度胸だけで頂点まで這い上がった青年にとって、ハモンこそ成功の象徴であり、自分が金持ちになったと実感させてくれるものだったのです。
 それはまた、スペイン全体が貧しい時代でもありました。今では闘牛士志願の若者たちも、そこまでハングリーではないようです。とはいえ、つつましい庶民の食卓では依然として、ハモンはややぜいたく品です。
 私が最初にスペインの北部で下宿した家では、毎日トルティージャ(ジャガイモのオムレツ)のボカディージョがお弁当でした。他の子が、ハモンやケソ(チーズ)のちょっとぜいたくなお弁当を持ってくるのが内心うらやましかったのですが、そのハモンのお弁当の子がある日私に、
 「あなたはいいわねえ、トルティージャで」
 とちょっと悲しそうにいいました。

マドリード、サン・ミゲル市場内のハム店

マドリード、サン・ミゲル市場内のハム店

 彼女が下宿していた家はかなりの上流階級で、お母さんはいい人ではあったけれど、下宿している日本人の女の子にオムレツを焼いてくれるような暇はないし、そんなことを考えてもみなかった。そしてある日訪ねてきたお祖母さんに至っては「どうして黄色人種の子なんか泊めているの?」とコメントしたそうです。
 だから、私の下宿の貧しくても心のこもったお弁当が彼女には羨ましかったのです。まだ若くて自己中心だった私は、あとになるまでそういったことに気付かず、私を暖かくもてなしてくれた家族に値する感謝の念を感じたのは、大分時がたってからでしたけれど…。
 1本のハモンの、そして一皿のハモンの後ろには、何かしら物語が隠れているのかもしれません。そんなことを思いながら食べるハモンは、肉食の国の食文化の奥の深さをじっくりと感じさせてくれるのです。

渡辺 万里

2011.11.06
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