とかく男性に注目が集まりがちな食の世界。でもそこにはたくさんの素晴らしい女性たちが活躍している。そんな「食の世界の女性たち」をテーマにした第2回軽井沢ガストロノミー・フォーラムが7月17日に開催された。
本フォーラムの主役はもちろん女性。「現場は私たちが主役!」と題した座談会では、食の世界の重要な担い手として注目されている生産者の女性たちが登壇した。「軽井沢サラダふぁーむ」の依田美和子さん、「ひまわり農園」の掛川育臣さん、「平井農園」の平井久美さん、それぞれ女性ならではの視点を持ちつつ活躍されているが、共通認識としては「消費者に生産地まで直接足を運んでほしい」ということ。野菜がどう作られているか、お米がどう育っていくかを知ることで、より豊かな食卓を実現してほしいという。過酷な労働条件の中で仕事をしていたりとなかなかに大変な彼女たちであるが、皆「やりがいを感じている」と素敵な笑顔を見せた。
スペインからの特別ゲスト「ア・タフォナ・デ・ルシア・フレイタス」のルシア・フレイタスシェフは、スペインで18%しかいないという女性シェフの一人。女性として苦労した時期はあったが、女性だからこそ、子供のために強くなるという気持ちを持てたこと、そして何より常に成功するための希望を捨てなかったことが彼女の活力となったという。現在スペインで食にかかわる女性たちを集めたMEG(Asociacion de Mujers en Gastronomia)を組織し、男性優位の料理の世界に一石を投じている。
「志摩観光ホテル」の樋口宏江総料理長、「里山十帖」の桑木野恵子総料理長、「シュヴァル・ド・ヒョータン」の川副藍シェフ、「Umi」の藤木千夏シェフ、「ヴィラ・デ・マリアージュ軽井澤」の小林愛実総料理長たち5人の「厨房からのメッセージ」と題した座談会で感じたことは、みな性差を感じる前に料理、とりわけ食材に真摯に向き合っていること。皆計り知れない努力をし、女性ならではの苦労をしているかもしれない。でもその前に、お客様に喜んでもらうため、そして食材を使いつくすために力を注いでいた。これは女性男性に限らず、料理にかかわるものとして、一番に考えなければいけない事象であろう。
食の世界では確かにまだ男性が優位なのかもしれない。ただガストロノミーの根本的な意味、つまりその土地ごとの伝統的な料理は祖母から母、娘、孫娘と女性がつないできたことも無視できない事実。男性女性、性差こそあれどちらが上でも下でもない。ただ同じ道を歩んでいく。それを知ってもらうのが、本フォーラムの意味の一つであるという。
とはいえ、食はおいしく楽しくいただくのが一番のこと。その思いは変わらないが、素材の作り手、料理の作り手の思いを知る。それこそが心から「ごちそうさま」と言えるのだと改めて感じた。
杉野 治子
ライター。発酵食エキスパート。上海のフリーペーパー『Whenever上海』にて「太太倶楽部」を連載し好評を博す。現在、英語料理教室のライティングスタッフとして活動する傍ら、日本の豊かな発酵文化を探求すべく酒蔵などを巡る。