¡Hola!

Ensaladilla rusa(ロシア風サラダ)。スペインでは、ポテトサラダのことをこう呼びます。ずっと前から、「ポテトサラダがどうしてロシア風なのか?」と不思議に思っていましたが、スペインでは誰に聞いても「さあねえ。ロシアから来たんじゃないの?」という程度で、答えはなし。

ところが今回、料理クラスで教えるのをきっかけにもう一度調べてみたら、かなり信憑性のある説が見つかりました。19世紀のロシアはモスクアのオリヴェルというシェフが作ったのが始まりだ、というのです。だから別名「エンサラダ・デ・オリヴェル」とも呼ばれるのだそうです。

でも可笑しいのは、そのあとです。こういうポテトサラダのことをロシアでは「アメリカ風サラダ」と呼んでいる、というのです。

そういえば、私が子供のころ「スパニッシュ・オムレツ」というのは、トマトやグリーンピースなど色とりどりの野菜がはいったオムレツのことでした。最初にジャガイモだけの真ん丸なオムレツを食べたときは、これが本物だったのかとびっくりしたものです。

ensaladilla rusaアメリカ人がスペイン風だと思っているオムレツ。スペイン人がロシア風だと信じてきたサラダ。日本人がバレンシア風だと思っているパエーリャ。どれも、本国の人が見たら「え、どこが?」と驚くことになるのかもしれません。それもまた、楽しいですね。
ちなみに、アカデミーで教えているのはきちんとスペイン風の(笑)ロシア風サラダ、です。

2011.11.15

スペイン料理ひとりごと・その5
Entre cazuelas y morteros
ああ、ハモン、ハモン

1 de noviembre.2011

料理エッセイ
 アカデミー賞受賞で有名になった男優ハビエル・バルデムの出ている映画「ハモン、ハモン」の話ではありません。ハモンのことを書こうと思ったら、語呂がいいのでなんとなく繰り返してしまっただけです。
 ハモン。生ハム。山岳地帯で作るハム。これほどスペインの食生活に密着した存在はありません。絶えず目にするし、食べてもいる。値段もピンからキリまであって、高いのは本マグロのトロを買うような思い切りが必要な値段だし、比較的安いものは、バルでの手っ取り早いおつまみからボカディージョ(サンドイッチ)にはさまって駅で売られているお弁当まで、あらゆるシーンに登場します。
 かつて一世を風靡した闘牛士、エル・コルドベスの伝記小説のなかに、
 「成功をおさめた彼にとって、ベッドの傍らにおかれた1本のハモンは、もう飢えることはないと感じるための最高の保障だった」という1節がありました。
 目が覚める。ハモンが丸ごと目に入る。それが何よりの安らぎを与えてくれる・・・。とことん貧しく飢えた時代を通りぬけ、自分の腕1本と度胸だけで頂点まで這い上がった青年にとって、ハモンこそ成功の象徴であり、自分が金持ちになったと実感させてくれるものだったのです。
 それはまた、スペイン全体が貧しい時代でもありました。今では闘牛士志願の若者たちも、そこまでハングリーではないようです。とはいえ、つつましい庶民の食卓では依然として、ハモンはややぜいたく品です。
 私が最初にスペインの北部で下宿した家では、毎日トルティージャ(ジャガイモのオムレツ)のボカディージョがお弁当でした。他の子が、ハモンやケソ(チーズ)のちょっとぜいたくなお弁当を持ってくるのが内心うらやましかったのですが、そのハモンのお弁当の子がある日私に、
 「あなたはいいわねえ、トルティージャで」
 とちょっと悲しそうにいいました。

マドリード、サン・ミゲル市場内のハム店

マドリード、サン・ミゲル市場内のハム店

 彼女が下宿していた家はかなりの上流階級で、お母さんはいい人ではあったけれど、下宿している日本人の女の子にオムレツを焼いてくれるような暇はないし、そんなことを考えてもみなかった。そしてある日訪ねてきたお祖母さんに至っては「どうして黄色人種の子なんか泊めているの?」とコメントしたそうです。
 だから、私の下宿の貧しくても心のこもったお弁当が彼女には羨ましかったのです。まだ若くて自己中心だった私は、あとになるまでそういったことに気付かず、私を暖かくもてなしてくれた家族に値する感謝の念を感じたのは、大分時がたってからでしたけれど…。
 1本のハモンの、そして一皿のハモンの後ろには、何かしら物語が隠れているのかもしれません。そんなことを思いながら食べるハモンは、肉食の国の食文化の奥の深さをじっくりと感じさせてくれるのです。

渡辺 万里

2011.11.06

2011年12月…「パエーリャ体験教室」のご案内

スペイン料理基礎「体験クラス」  6,000円(1回)

「スペイン料理に興味はあるけれど、入会する前に一度試してみたい…」という方のために、気軽に参加できる体験クラスのシステムが始まりました。
入会金なしで、スペイン料理・基礎のクラスに1回だけ参加できます。また、参加後に引き続きクラスの受講を続けたい方には、入会金特別割引きもご用意しています。
この機会にぜひ、おいしくて健康的、身近な材料で簡単に作れるスペインの家庭料理に挑戦してみませんか?

パエーリャ
日程
・12月 3日【土曜日・午後 2時~】
・12月 4日【日曜日・朝11時~】
・12月 7日【水曜日・朝11時~】
メニュー
・12月:[パエーリャ]
 サングリア、パエーリャ、サラダ、デザート。

パエーリャ
※講習と試食で約2時間かかります。
※費用:6,000円(試食、ワイン、テキストを含む)
※「体験クラス」参加後に引き続きクラスの受講を続けたい方には、入会金特別割引がございます。詳しくはお問い合わせください。


定員につき、締め切らせていただきました。また次回に、ぜひご参加ください。

2011.11.06

¡Hola!

 季節が急速に深い秋へと移行し、日によっては秋を飛び越して冬が来てしまったような日差しや風が感じられます。
 信州でもすっかり季節が移り変わって、農協の直売所の棚にも夏の野菜の華やかな彩りがみられなくなってきました。もうあの巨大なズッキーニがない。いつ見てもたくさん買いたくなるようなふっくらしたモロッコいんげんもない。様々なタイプと大きさが競い合っていたトマトの棚もさびしい・・・。でもそこで気付くのです。これが当たり前なのだ、これが自然なのだと。
 季節とともにステージを去る野菜があって、季節とともにライトを浴び始める野菜がある。太くてダイナミックなネギや、葉っぱまでみずみずしい大根。そして「霜下野菜」とネーミングされたキャベツなどが、今の季節の主役です。
 一日のうちに急激な気温の変化があって、夜には霜が降りるほど寒くなる。その気候が、今の季節のキャベツをより甘く、よりおいしくしているというのです。「やわらか種類」と説明を書かれた下で、キャベツは本当に力強く生き生きとしています。
 季節に適応し季節を逆手にとって、よりおいしくなる野菜たちのように、私たちも時代に適応し困難を逆手にとって、より豊かな人生を送ることができるようでありたいですね。

渡辺万里

2011.10.28

スペイン映画大好き!
¡A mí me gusta cine español!
El viaje a ninguna parte(どこにも着かない旅)

El viaje a ninguna parte
 旅芸人の物語。出会いと別離。内戦後の時代の厳しさ―――スペイン映画界が得意とするこのテーマを語るなら、なんといっても最初に揚げたいのが、1986年制作のこの映画である。スペイン映画のための権威ある賞として現在ではすっかり定着した「ゴヤ賞」の第1回の受賞作品。名優フェルナンド・フェルナン・ゴメスの監督作品として記念すべき作品でもある。


 旅の役者たちに対するオマージュと言えるこの作品を、フェルナン・ゴメスは彼自身の生きてきた時代そのものに対する深いノスタルジーを込めて描いている。
 旅の一座を率いる一家の若者、父親、祖父という三つの世代それぞれの愛と葛藤。映画に押されて、もう斜陽の座から這い上がることのない旅回りの芸人たちの貧しさ。それらすべてが、今は年老いた役者自身の回想として語られ、そこでは過去の現実と、彼の幻想と、旅の舞台の上での芝居の三つが微妙に入り混じって、一種不思議な世界を織りなしていく。


 彼が心の中でなぞっているのは、戦後の荒れすさんだスペインの村から村へ、絶えず進んでいくしかない、しかしどこへも着かない芸人たちの旅。そして彼の人生そのものという、どこにも行きつかなかった旅・・・。


 そう並べていくと話は暗くなる一方のようだが、その底辺に常に流れるスペイン映画独特の諧謔、画面の絵画的な美しさ、それぞれが達者な俳優たちの淡々とした演技が、この映画を単に旅芸人という特殊な世界を描いたものというだけではなく、ひとつの時代に生きる人々の群像とその哀歓を浮き彫りにするものにまで普遍化している。戦後70年経った現在でも見る価値のある、むしろこの時代を知らない若者たちの時代になったからこそ、一層見てほしい映画といえるだろう。


原題:el viaje a ninguna parte
監督:Fernando Fernan Gomez / フェルナンド・フェルナン・ゴメス
出演:Jose Sacristan / ホセ・サクリスタン
   Gabino Dieg / ガビーノ・ディエゴ
   Fernando fernan Gomez / フェルナンド・フェルナン・ゴメス ほか
   1986年/スペイン/スペイン語/134分


2011.10.23
次の記事 | 前の記事
このページのトップへ