¡Hola!

 昨日は、アカデミーのワイン会でした。「スペインワインを楽しむ会」は、今回で112回。皆勤でいらしている方は、延べ1000種類ほどのスペインワインを試飲したことになります。そしてそれでも、まだまだご紹介したいワインがあることに、自分でも驚きます。
スペインワイン 元々はブドウという農業に根ざした文化であるからこそ、立体的で複雑なワイン造りの面白さ。スペインの風土とスペイン人気質が生み出してきたワインの変遷をみていくと、スペインの歴史そのものにもつながっていく面白さ…。ただ、「このワインが流行だ、最新だ」というだけでなく、そういう背景まで知って楽しんでいただけたら、と願っています。
 さらには、あまり明確にならない未来を背負ってしまった日本で、これからもおいしいワインとおいしい料理を楽しんでいけることを心から願って。今日もスペインワインで乾杯!

渡辺万里

2011.09.26

スペイン料理ひとりごと・その3
Entre cazuelas y morteros
素材の料理

20 de septiebmre.2011

料理エッセイ
「Cocina de futuro va a ser cocina de productos.」
 スペインテレビの週刊ニュースで聞いた言葉です。「これからの料理とは、素材の料理だ」。そして、「その点、スペインはスタートから大きくリードしている。これほど素材に恵まれた国は少ないのなから」と続きます。
 確かにスペインは、豊かで質のいい、そしておいしい食材に恵まれた国です。大事なのは、スペイン人たちが今そのことを再認識しているということでしょう。
 日本では、予想もできなかった規模の原発事故があった。そのことの重み、特に食にたずさわる人間にとっての重みは、スペインのシェフたちも感じています。だから、今までなんでもないことのように受け止めていた食材のありがたさが、改めて分かってくるのです。
 「哲学的料理人」と呼ばれるアンドニ・ルイスは「ただ卵を食べるのではなく、誰が生産者か、どんな餌を食べ、どんな育て方をした鶏の卵かを知って食べる。そうすることで、味も違ってくる」と語ります。魚はフライ、エビは塩ゆでと決まっていたアンダルシアの港町で、魚のおいしさをさまざまな角度から追及して新しい皿を作りだそうと工夫しているシェフもいます。
 つまり、最先端の創作料理に挑んでいる料理人たちも、「素材と向き合う」ことの大切さに立ち戻ってきているのです。

金沢の市場の加賀野菜

金沢の市場の加賀野菜

 日本の私たちは、どんな形で素材に向き合っていけばいいのでしょう? もっと簡単にいえば、何を食べていけばいいのでしょう? 私にも、答えは分かりません。できるだけ色々なデータを読み少しでも勉強して、理解できた範囲で安心して食べられる食材を選ぶことくらいしかしかないでしょう。
 素材だけではなく、どう調理して食べたらいいのか、ということも色々な角度から考えていく必要があります。新しい料理を発明するためだけでなく、古くからの料理のメリットを説明し理由づけるためにも、科学が役立つようになってきました。もはや、科学と料理を切り離しておくことは怠慢と呼ばれる時代が到来しつつあるのです。
 そんな、いささか気の重くなるような課題が目の前に積まれてしまった今、一番の救いは、「おいしく食べることの大切さ」はどんな時代にも変わらない」ということでしょう。知識を身につけ、きちんと選ぶ。そのうえで、今この瞬間においしく食べられるものがあることを感謝し、おいしく食べられる健康があることに感謝して、食を楽しむ。それが、このカタストロフの時代を生きていく私たちに許されたスタンスではないだろうか、と考えるこの頃です。

渡辺 万里

2011.09.20

2011年10月…スペイン料理「体験クラス」のご案内

スペイン料理基礎「体験クラス]  6,000円(1回)

「スペイン料理に興味はあるけれど、入会する前に一度試してみたい…」という方のために、気軽に参加できる体験クラスのシステムが始まりました。
入会金なしで、スペイン料理・基礎のクラスに1回だけ参加できます。また、参加後に引き続きクラスの受講を続けたい方には、入会金特別割引きもご用意しています。
この機会にぜひ、おいしくて健康的、身近な材料で簡単に作れるスペインの家庭料理に挑戦してみませんか?

日程:
【水曜日・朝11時~午後1時】  10月 5日
【土曜日・午後2時~午後4時】  10月 1日
【日曜日・朝11時~午後1時】  10月 2日

メニュー:
・10月:[カンタブリアの歴史と料理]魚介類のスープ、サラダ、いかの墨煮、デザート。

※講習と試食で約2時間かかります。
※費用:6,000円(試食、ワイン、テキストを含む)


定員につき、締め切らせていただきました。また次回に、ぜひご参加ください。

2011.09.19

¡Hola!

 朝夕から少しずつ、秋の気配が忍び寄ってきます。この週末は、方々の街角で秋祭りの神楽や神輿を目にしました。自然に翻弄され、自然に驚かされるこの半年でしたが、それでも日本人の自然との向き合い方にはまだ、慈しみ敬う気持ちが残っている気がして、なんだかほっとします。

ナスのムルシア風

ナスのムルシア風

 スペインでは、夏が終わるとあわただしく収穫の秋、つまり労働の秋がきて、そのあとには待ち遠しいクリスマスがやってきます。「1年の半分は、夏のバカンスについてしゃべっている。あとの半分はクリスマスについてしゃべっている」とまで言われるスペインの人たち。それがスペイン人流の「面倒な季節をやり過ごす方法」なのでしょう。
 日本の私たちはクリスマスを待たなくても、秋祭りを楽しみ、ナシやブドウが店頭に並ぶのを喜び、そして今この時を生きていることを感謝しながら、良い季節を過ごしたいものですね。

渡辺万里

2011.09.13

スペイン料理ひとりごと・その2
Entre cazuelas y morteros
カメのタロー

8 de septiebmre.2011

料理エッセイ
 うちには、8歳になるミドリガメのタローがいます。タローは主人が祭りの屋台で掬ってきたのですが、最初は弱くて、「カメの餌」というドライフードをまったく食べませんでした。
 困ってインターネットで調べてみると、カメは幼いときは肉食を好む、とあります。そこで豚肉の赤身を小さくちぎって入れると、喜んで食べます。
 しかしほっとしたのもつかの間。数週間経つと、タローの目がぷっくりと腫れ上がってきて、ほとんど開かないほどになってしまいました。あわてて獣医さんへ。(ちなみに、爬虫類専門のとても良い獣医さん、これもネットでみつけました)。
 獣医さんはタローの目を見て言いました「これはビタミン不足だね。このままだと可哀そうだけど、いずれは死んじゃいます。でもあなたはやる気がありそうだから、こうしてみれば?」
 獣医さんが教えてくれたのは、ドライフードをすり餌状態にして好物に混ぜていく、という方法でした。その日から、スペイン料理ならぬカメの餌のために、私のモルテーロ(すり鉢)が台所に置かれました。まずドライフードを数粒、モルテーロでつぶす。そこに豚肉を加えて擦り混ぜ、直径3ミリくらいのお団子にまるめる。これを水槽のタローに与えるのです。
ミドリガメのタロー まもなくタローはこのお団子を食べるようになり、やがて必死で探して食べるほど好きになってくれました。そしてある日。これも獣医さんの指示通り、お団子と一緒にいれておいたドライフードそのものもぱくっと口にいれ、吐き出さずに食べたのです!
 その日を境にタローは次第にドライフードが食べられるようになり、すくすくと大きくなり始めました。18グラムだったタローは今、約2キログラム。もうデジタルの秤になんかおとなしく乗ってくれません。
 きらいな食べ物も、愛情があれば、ほんの少しの努力があれば、食べてもらえるようになる。カメの食事でさえ、料理は愛情なのだ・・・。そう感じさせてくれたタローは、今日もドライフードに好物の小松菜を添えた食事を、うれしそうにぱくぱくと食べています。

渡辺 万里

2011.09.10
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