フラメンコ・ミニエッセイ その3
“アルグノス・モメントス”
フラメンコについて語るには、カンテ(歌)について語らなければならない。あの パコ・デ・ルシアが言っているように、我々ギタリストは、歌いたいのに歌うことがで きない、いわば欲求不満の歌い手たちなのである。
ギタリストが心で歌いながらギターを弾くとき、踊り手が俗に「歌を踊る」と言わ れるように歌に合わせて踊るとき。そこにフラメンコというひとつのドラマが始まる。
私にとって、もっとも好きなのは歌のために弾くことであり、そしてもっとも難し いのも歌のために弾くことである。
それは一種の会話のようなものだから、これほどに繊細で複雑なのである。その対 話のためにギタリストは、適切な出だしを弾き、正しいコードを弾き、歌い手の声の 速度を推し量らなくてはならない。
しかしまた同時に、これほど素晴らしい、うっとりさせてくれることがあるだろう か。二人の人がひとつの音楽を実現していくこと。インスピレーションを共有するこ と。そして共に歌うことほどに………。
それは瞬間の音楽である。そして永遠でもある。あなたが自分のなかに「歌」を感 じたなら、その音楽は常にあなたの元に止まるだろうから。
カルロス・パルド
(対訳:渡辺 万里)
(対訳:渡辺 万里)