スペイン料理ひとりごと・その2
Entre cazuelas y morteros
カメのタロー

8 de septiebmre.2011

料理エッセイ
 うちには、8歳になるミドリガメのタローがいます。タローは主人が祭りの屋台で掬ってきたのですが、最初は弱くて、「カメの餌」というドライフードをまったく食べませんでした。
 困ってインターネットで調べてみると、カメは幼いときは肉食を好む、とあります。そこで豚肉の赤身を小さくちぎって入れると、喜んで食べます。
 しかしほっとしたのもつかの間。数週間経つと、タローの目がぷっくりと腫れ上がってきて、ほとんど開かないほどになってしまいました。あわてて獣医さんへ。(ちなみに、爬虫類専門のとても良い獣医さん、これもネットでみつけました)。
 獣医さんはタローの目を見て言いました「これはビタミン不足だね。このままだと可哀そうだけど、いずれは死んじゃいます。でもあなたはやる気がありそうだから、こうしてみれば?」
 獣医さんが教えてくれたのは、ドライフードをすり餌状態にして好物に混ぜていく、という方法でした。その日から、スペイン料理ならぬカメの餌のために、私のモルテーロ(すり鉢)が台所に置かれました。まずドライフードを数粒、モルテーロでつぶす。そこに豚肉を加えて擦り混ぜ、直径3ミリくらいのお団子にまるめる。これを水槽のタローに与えるのです。
ミドリガメのタロー まもなくタローはこのお団子を食べるようになり、やがて必死で探して食べるほど好きになってくれました。そしてある日。これも獣医さんの指示通り、お団子と一緒にいれておいたドライフードそのものもぱくっと口にいれ、吐き出さずに食べたのです!
 その日を境にタローは次第にドライフードが食べられるようになり、すくすくと大きくなり始めました。18グラムだったタローは今、約2キログラム。もうデジタルの秤になんかおとなしく乗ってくれません。
 きらいな食べ物も、愛情があれば、ほんの少しの努力があれば、食べてもらえるようになる。カメの食事でさえ、料理は愛情なのだ・・・。そう感じさせてくれたタローは、今日もドライフードに好物の小松菜を添えた食事を、うれしそうにぱくぱくと食べています。

渡辺 万里

2011.09.10

スペイン料理ひとりごと・その1
Entre cazuelas y morteros
「これがピスト?」

1 de septiebmre.2011

料理エッセイ
 アカデミーで料理クラスのメニューを考えるときの私のポリシー。それは、「できるだけスペインの味に近いものを食べてもらうこと」です。
 味を知らなくては、その料理は作れない。もとの味を知らなければアレンジもできない。だから、『その料理の味を知ること』が常に料理のスタートだと思います。
 そうはいっても、素材も全部同じというわけにはいかない。水だって気候だって、すべてが味を左右していきます。だから私の基準は、スペイン人が食べて「うん、これは○○だ」とわかる料理であるように、ということ。これがピスト?セロリの煮ものみたいだけど?」「これはパエリャというより釜めしだなあ」とがっかりされないこと。それが、私が料理するときの目標です。

豚足のレリダ風

豚足のレリダ風

 そして一番うれしいのは、スペインの私の家族や友人に褒められること。「うちの嫁のロンバルダ(紫キャベツ)は最高だよ!」「このポタヘ、どうしてこんな味になるのか教えて!」「あんたのアロスコンレッチェも、やっとおいしくなったね!」・・・。
 そんなスペインの親しい人たちの顔を思い浮かべながら、料理をします。今までの長い年月のあいだに、私にさまざまな形で料理を、食を、スペインを教えてくれた彼らに、喜んでもらうこと。それが私の料理の原点、そしてスペインとの関わり合いの原点だと時々自分に言い聞かせながら、料理をしています。

渡辺 万里

2011.09.03

第112回 スペインワインを楽しむ会

Todo sobre vino de Navarra
ナバラのワインをとことん楽しもう!

Guelbenzu Eevo 2006
 スペイン北部のナバラ地方は有数の野菜産地。アスパラガスもピーマンも、アーティチョークもインゲン豆も、最高といわれるものはほとんどがナバラ製です。そんなナバラのワインは昔から愛されてきましたが、近年になって特に品質が向上し、幅広い魅力を持つ産地として再評価されています。
 そのうえ、赤、白、ロゼ、デザートとさまざまなタイプに優れたワインがあることも、この産地の魅力のひとつ。今回は、そのなかから選りすぐった上質のナバラ・ワインを、初秋の野菜を中心にしたヘルシーなメニューとともにたっぷりと楽しみたいと思います。しばらくぶりの目白でのワイン会、どうぞふるってご参加ください。

・日時:2011年 9月25日(日曜) 午後 1:30~3:30
・場所:スペイン料理文化アカデミー
・会費:10,000円(ワイン、食事、資料を含む)
・ワイン:Albret, Guelbenzu, Chivite , Artazuri, Monastirなど。

■お申し込み・お問い合わせ:スペイン料理文化アカデミー mail
 TEL: 03-3953-8414(留守電にお名前、ご連絡さきなどを録音してください)
*キャンセルは3日前までとなります。以後はキャンセル料が発生します。
*メニュー、ワインなどは変更することもありますので、ご了承ください。

スペイン料理文化アカデミー
http://academia-spain.com


定員につき、締め切らせていただきました。また次回に、ぜひご参加ください。

2011.08.28

Austum 2008

Austum 2008

Tipo de vino ワインのタイプ:tinto, cosecha
D.O. 指定産地:Ribera del Duero
Uva ブドウ品種:Tinta fina
Grado Alcoholico アルコール度数:14 % vol.
Bodega ワイナリー:Bodegas Tionio S.A./Pesquera de Duero, Valladolid.
Comentario コメント: 良質のカバで知られたパルチェというボデガがリベラ・デル・ドゥエロに作ったボデガのセカンド・ワイン。フルーティなトップノートが、次第に質感を伴った熟成感と予想よりしっかりしたタンニンへつながっていくところに、うれしい意外さがある。おいしいレチャル(乳飲み子の羊)が手元にないのが残念になるが、たいていの肉料理を素直に引き立ててくれるのは間違いない。もう少しビン熟成が進んで樽の印象が和らぐと、値段の割に贅沢なワインになるだろう。カタルニア資本進出の成功例のひとつ。

ブドウ畑ワインセラー

2011.08.28

Cepa21 2006

Cepa21 2006

Tipo de vino ワインのタイプ:tinto,crianza
D.O. 指定産地:Ribera del Duero
Uva ブドウ品種:Tinto fino
Grado Alcoholico アルコール度数:14 % vol.
Bodega ワイナリー:cepa 21
Comentario コメント: 高級ワイン産地リベラ・デル・ドゥエロのなかでも、手堅い技術と高品質なワイン造りで定評のあるエミリオ・モロ社が、別にボデガを構えてリリースしたワイン。親しい友人である俳優のイマノル・アリアスとコラボレートするために作ったというこのプロジェクトは、十分に個性的で楽しめるワインという成果を生んだ。パワフルで生き生きした第一印象からフレンチオークでの14ヶ月の熟成が生む繊細な翳り、立体的で存在感溢れる余韻まで、飽きさせない展開を見せてくれる。カスティーリャの大地で生まれた仔羊のローストと最高の相性だが、せめて日本で入手できるラムかイベリコ豚とあわせてみてほしい。

Cepa21

2011.08.27
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